コラム
11月30日より、前代未聞の裁判が始まりました。裁判の結果よりも、将来のために意味のあるになるでしょう。
小児生活習慣病改善訴訟
~大田区立小学校学校医の小児生活習慣病健診の結果説明と栄養指導を、
牛乳給食を理由に禁止・検閲した、憲法・学校保健安全法違反に対する損害賠償請求訴訟~
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本訴の骨子(平成27年10月21日に東京地方裁判所に訴訟提起)
平成26年7月16日、高野医師は、大田区立徳持小学校の学校保健委員会において、学校医として保護者に対し、児童が受診した小児生活習慣病健診の結果を説明して、栄養指導を行い、好評を博しました。ところが、大田区立徳持小学校は、校内に対し学校保健委員会報告を行う際、その
内容を歪め、重要な内容を封殺しました。
以来、高野医師は上記健診結果説明と栄養指導の本来の趣旨を回復すべく、訂正書面の配布を求
めましたが、大田区立徳持小学校及び大田区教育委員会は、訂正書面の内容・表現の修正を求めて配布に応じず、それどころか遂には、独自に修正案を作成して送付してくるにまで至りました。大田区によるこのような表現の禁止・検閲が止まず、保健指導が妨害されて、憲法上の権利が侵害さ
れ続けていることから、大田区に対し、国家賠償を求めて東京地裁へ訴訟提起しました。
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大田区が隠ぺい・検閲したことは
(1)多くの児童が高コレステロール血症に罹患している:最近の東京都予防医学協会の小児生活習慣病予防健診では、小学4年生の約2割が大人の基準の高コレステロール血症に罹患しています。大森医師会による小児生活習慣病健診においても、高野医師が学校医を務める徳持小学校
の受診児童39名中、LDL コレステロール値が小児の正常値を超えている児童が9名、140mg/dl を上回る児童も2名いました。高コレステロール血症は心筋梗塞や脳梗塞の原因となる疾患です。近年、心筋梗塞や脳梗塞の発症は、若年化の傾向にあります。これらの主な原因のひとつは、動物性脂肪の摂取増加です。
(2)ほとんどの児童は動物性脂肪を牛乳・乳製品から摂りすぎている:日本動脈硬化学会は、動物性脂肪(飽和脂肪酸)の摂取を制限して、「肉の脂身、乳製品、卵黄の摂取を抑え、魚類、大豆製品、野菜、果物、未精製穀類、海藻の摂取を増やす。」との食事指導を必ず行うようにと医師を指導しています。健診受診全児童の8割以上が動物性脂肪摂取過多で、その動物性脂肪の摂取源の46%が牛乳・乳製品からでした。
(3)欧米先進国は栄養政策でコレステロール値を下げて、脳梗塞・心筋梗塞を減らしている:
高野医師が行った栄養指導は、上記事実を指摘して動物性脂肪摂取過多につき注意喚起し、欧米先進国で成功した栄養政策を示して、日本での食育の在り方について検討を促すものでした。
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大田区の意図とその問題
大田区の前学務課長は,「文部科学省は学校給食で牛乳を飲ませる方針であるから、牛乳が高コレステロール血症の原因であることを知らせることは自己矛盾するので知らせない方針である。先生は医師であるが、学校医であるので文部科学省の方針に従いなさい。」と発言しました。大田区は、現状維持のため、高野医師の健診結果説明と栄養指導の内容を歪めて、小児高コレステロール血症の蔓延と動物性脂肪摂取過多の事実を隠ぺいし,現在も本来の報告書の配布を妨げています。
実際に,高野医師の学校医・医師としての職務の全うを妨げるのみならず、憲法上の権利である表現の自由をも侵害しているのです。
これは国民の健康権の侵害、保護者がその児童に関する重要な情報を知る権利の阻害であり、極めて重大な問題です。
『東京新聞』