栄養士・通信読書会

私たちが学んだのは「栄養学」ではなく「食品学」です

これが栄養教育の現状

 

 ある大学病院であった本当の話です。
知人の入院患者さんにだされたメニューに、なんと「カロリー○イトの卵とじ」があったのです。その患者さんは、栄養士を呼び、「これが食事と言えるのか?」と問いただしました。栄養士は、「心配いりません。きちんと栄養素のバランスを考えています」と答えたと言います。

みそラーメン、カルピスゼリーポンチ、牛乳(神奈川県)
あんぱん、すいとん汁、バナナ、牛乳(神奈川県)
マヨネーズ炊き込みごはん、ししゃものフリッター、いなかじる、牛乳(埼玉県)
スパゲッテイーミートソース、えびかつ、カラフル白玉ポンチ、チーズ蒸しケーキ、牛乳(茨城県)

 言うまでもなく、学校給食の「献立」です。
さすがに、「カロリーメイトの卵とじ」「あんぱんとすいとん汁」という組み合わせはおかしいと考える方が多いと思います。しかし、それは単に、個人的な「常識」や「感覚」の問題にすぎません。牛乳さえつければ、カルシウムさえとれば、栄養素のバランスはとれていると考える。それに対して、何の疑問ももたないだけではなく、真面目に「健康にいい」と考えている。おそらく、栄養士の90%以上が、同じだと思います。これが、私たちの受けてきた「栄養教育」そのものなのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

●栄養教育への疑問から玉石混交の世界へ

 

 さすがに、まともな「感覚」を持っている方は、これまでの栄養教育に疑問を持ち始めていることと思います。私たちが勉強してきたのは、食品学であって栄養学ではありません。

 私は、大学を卒業して専門学校に就職しました。二年後に、「ほろびゆく長寿村」という『朝日新聞』の記事に出会います。それは、山梨県の棡原(ゆずりはら)村を紹介したものです。かつて長寿村と呼ばれた村が、近代化した食生活をするようになって、短命化したという内容でした。その村を紹介したのが、甲府市で開業していた古守豊甫先生(内科医)でした。早速、棡原村を訪ね、古守先生の書かれたものを貪るように読んだものです。

 栄養教育に疑問を感じ、わずか二年で専門学校を退職しました。それと同時に、食生活の面白さを感じるようになります。古守先生の本に紹介されていたのが、桜沢如一という人でした(マクロバイオテイックの創始者)。その主張の小気味よさに、かなりの本に目を通したと思います。マクロバイオテイックの団体が主催する合宿にも参加しました。その際、埼玉県から参加された方から、「栄養教育に疑問を持つのはいいですが、様々な主張をする団体がたくさんあるんですよ。仕事と考えるのなら、幅広く見たほうがいいと思います」というアドバイスを受けます。恵まれた出会いだったと思います。

 その後、「健康と食生活」に関する本を乱読することになります。国会図書館に通い、明治、大正、昭和初期のものまで調べました。また、「健康と食生活」について本を書かれている先生(医師が多い)を訪ね歩きました。当時は、今ほどいませんでしたので、ほとんどの先生を訪ねたと言ってもいいでしょう。その間、食事療法を重視する、お茶の水クリニック(院長・森下敬一)、みどり会診療所(院長・馬淵道夫)などでも勤務しながら、勉強しました。

 武術家の甲野善紀氏の書かれた名著、『表の体育・裏の体育』(壮神社)に次の文章があります。

「公共機関の認知外である裏の体育は、どうしても情報が偏り、しかも一般に知名度の高いものが優れているとも限らず、現状はまさに玉石混交である。したがって、玉石混交の裏の体育に埋もれている非常に貴重な体系や技術も、言ってみれば民間の、単なる〈噂〉として国民に伝わるにすぎず、一般社会人の中でそれに気づく人はよほど感覚のいい、鼻のきく人に限られてしまう。しかもそれを嗅ぎわけ、それに気づいた人が幸せかというと、そう単純に〈気づいて、出会えてよかった〉と言い切れないのが、この裏の世界の裏たる所以である。」

 まさに、甲野氏が指摘するように、栄養教育以外の食生活に対する考え方は、玉石混交です。そして、それらに出会えて良かったと言いきれない人(犠牲者)もたくさん目にするようになります。

 


●きちんと勉強した人の「主張」はほとんど同じ

 

 私が初めて書いた本は、『体によい食事 ダメな食事』(風涛社・1990年)です。初めて、自分の主張をしたということになります。栄養教育に疑問をもって専門学校を退職して、10年以上の時間が経っています。その間、どれだけの職業を経験し、先生を訪ね、どれほどの道を歩いたでしょうか?読んだ本はどのくらいになるのでしょうか。

 これは苦労話を自慢しているわけではありません。栄養教育に疑問をもつ10パーセントの栄養士さんたちに、誤った道を歩んで欲しくはないからです。あまりにも簡単に、マクロバイオテイック、ナチュラルハイジーン、ローフード、低炭水化物ダイエットと流行のように追いかけまわす人が多いからです。
 
 今、思います。

1 冊も本を読まない栄養士は、何の疑問をもたず、永遠に「バランスのとれた食生活をしましょう」と言い続けることでしょう。

20冊の本を読んだ栄養士は、極端な主張に目が留まります。そして、ある特殊な食事で病気が良くなった栄養士は、客観性をなくして盲信することになります。

50 冊の本を読んだ栄養士は、ノイローゼになります。

100 冊の本を読んだ栄養士は、何も食べられるものがないことに気付くことになるでしょう。

300冊の本を読んだ栄養士は、おおよそ同じ主張に落ち着くことになります。

 これは栄養士に限りません。食生活に関心を持ったすべての人に言うことができます。
 私が尊敬する先生方は、まちがいなく 300冊の本を読んだ方です。いや、1000冊かも知れません。1000冊の本を読むには、時間がかかります。その間、本を読むだけではなく、さまざまな体験や勉強、あるいは臨床を経験していることは言うまでもありません。きちんと勉強した人の主張は、ほとんど同じになります。

 


● 「1年間」何冊でも紹介します

 ある栄養士さんから、次のような手紙がきました。

―ご無沙汰しております。覚えているでしょうか。十年前、先生の本に感銘を受けましたが、その後、興味は分散して、たくさん浮気をしてきました。でも、今になって先生の主張する食事が一番納得できるものだと考えています―

 うれしい便りですが、たぶん、また浮気をすることになるでしょう。なぜなら、さまざまな主張の食生活を実践して、その極端さについていけなかっただけだと思います。

 たとえば、理想的な果物は何か?という例で考えてみましょう。私はみかんが理想だと考えているとします。その栄養士さんは、みかんがぶどうになったり、パイナップルになったようなものです。なぜそうなるのか、「果実」だけを食べて、これが美味しい、まずいと比較しているだけだからです。根っこ(基本)から見ていないのです。何本も張り巡らされた「根」、そして幹を見てから、「果実」を考えている人は、さまざまな「情報」に右往左往することはありません。

 このような栄養士さんにどれだけお会いしてきたでしょうか。それも仕方ない面もあります。私自身も、栄養教育に疑問をもったとき、いったい何から勉強していいのかわかりませんでした。そのため、ずいぶん遠回りをしてしまったと思っています。遠回りはムダではないと思いますが、あえて、遠回りをする必要はないと考えています。
 玉石混交の情報に右往左往している栄養士さんがたくさんいると思います。いや、悩まない人がいるとしたら、生涯、意味も考えずに「バランスのとれた食生活」という言葉をいい続けるか。栄養教育の疑問から、一つの主張に「盲信」しているだけです。そして再び、別の極端な主張に盲信することになるでしょう。
 栄養教育に疑問を持った栄養士さんから、「どのように勉強したらいいでしょうか?」、あるいは、「基本から勉強できる教育機関はないでしょうか」という質問がたくさん寄せられます。そのような要望が、これまでもたくさんありました。しかし、理想的な教育方法を考えれば考えるほど、費用(受講料・交通費など)の問題があり躊躇してきました。そこで、今回、「通信教育」を考えました。正確に言えば、「通信読書会」というべきでしょう。
 私どもで「指定」する図書を読んで、レポートを提出していただきます。そのレポートに沿って、「指導・添削」させていただき、再び、指定図書を指定させていただきます。「 1年間」何冊でも紹介させていただきます。 お申し込みは 1年単位になります。 1年終了時、希望される方は 2年目をお申し込みください。ただし、 1年目のレポートによっては 2年目はお断りすることもあります。なお、 1年目の「指定図書」は、現在、一般書店で購入可能なものです。 2、 3年目の指定図書は、絶版になっているものもあります。中古購入、あるいは、図書館などで借りる手間がかかる可能性があります。

 今、食生活の「基本」を身に付けるのに、1000冊もの本を読む必要はないと思います。きちんと読むべき本を読めば、それで充分に「基本」は身に付くと考えています。すでに、それだけの情報はそろっています。

 果物の話で言えば、「根(基本)」を身につけるための勉強だと考えていただければと思います。そこから幹や枝、葉、そして、果実を考えるための出発です。ご紹介する本は、必ずしも、私(幕内)と同じ主張をしているものではありません。根は広いほうがいいと思うからです。すべて、読み終わったとき、食生活の「基本」が身につくことを目的に選んだものです。本気で勉強したいと考える、栄養士の方の受講をお待ちします。
 今ほど、私たち栄養士の仕事が求められている時代はないと思います。その時代の要請に応えるために、
本を読むことさえ難しいと考える方の受講はお勧めしません。ご希望される方は以下のメールにお願いします。案内をお送りさせていただきます。

 

 fandh-2@arion.oc.ne.jp

『栄養士・通信読書会』受講者の「声」

 


 

カロリーメートの卵とじ(右上)