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  学校給食は必ず変えられる

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・母乳育児は『食』の原点(1~3)

・19年目の給食 ―闘う教師―(1~3)

・子どもの口に何が起きているのか(1~3)

・私が学校栄養士になったわけ(1~3)

 

『子どもは体で食べる』

和光幼稚園 大瀧三雄

 

第二回 「おにぎり弁当をはじめて」

 4年前、幕内先生に講演に来ていただき、「子どもにとっての食事」をテーマに話していただきました。それをきっかけに、週1回金曜日はおにぎり弁当です。始めるにあたって、具なしの塩をまぶした塩おにぎり、または海苔をまいたおにぎりだけにしました。具が入ると、子どもが「どんな具を入れて」などと要望すると母親が悩みますし、せっかくおにぎり弁当にした意味がなくなります。

​ 幼稚園では、おにぎり弁当の日は、野菜だけの味噌汁をつくって子どもたちに出しています。みそ汁の具は、父母からの差し入れ(野菜だけ)でまかなっています。ただダシは子どもの味覚を育てることにもつながるので、だし昆布とウルメイワシとサバの削り節でこだわっています。金曜日は職員室からダシのいい香りがします。お母さんたちはこのにおいを感じて「いいにおい」「先生、私たちも飲みたいな」という声がよく聞こえてきます。なかには「どこで買っているのですか」と聞いてくる人もいます。
 おにぎり弁当にして感じたことは、子どもはおにぎりだけで十分で、「おかずがほしい」と言う子どもが園ではいません。「むしろおにぎり弁当の時は、ご飯をよく食べる」という声が聞こえてきます。子どもによってはおかずがないことで、ご飯をたくさん食べる子どももいます。また、食事にかかる時間も短くなっています。おかずで悩む必要がないからです。でも時々、「おにぎりだけではいや」と家で言っている子どももいますが、みんなと食べていると、そのような声もだんだんなくなります。

 

①ご飯中心のお弁当が増えて
 変わったことは、日常のお弁当もご飯を中心につくられるようになりました。以前は「果物はいいですか」「ふりかけはいいですか」など、お弁当にかかわっていろいろな質問が寄せられてきたのですが、そんな質問もなくなりました。子どものお弁当を見ていると、7割近くはご飯でおかずが少なくなってきています。
 

②インフルエンザを発症する子どもが
 もう一つは、毎年1月から3月にかけてインフルエンザが流行しますが、ここ3年間インフルエンザにかかる子どもが少なくなってきています。今年は、周りの幼稚園や小学校では学級閉鎖が出ていましたが、和光幼稚園では、この間にインフルエンザを発症した子どもは9人で、約160人の子どもがいるわけですが発症率は5%です。一概にこれだけでとはいえませんが、子どもの体調は「睡眠と食事」で左右されると日頃思っていますので、食事の安定は子どもの体調の安定につながるのではないでしょうか。
 

③味噌汁で
 野菜の味噌汁ですから、好き嫌いがあり子どもにとっては苦手な人もいて、どうかと心配していましたが、以外と子どもたちには人気です。「大瀧先生、みそ汁おいしかったよ」という声がよく聞かれます。私は味噌汁をつくることで子どもとつながりが広がりました。もちろん野菜の苦手な子どもは、「汁だけにして」「○○は入れないで」と要望してきますので、それにもこたえていますので、味噌汁は大好きなのです。
 一番感じることは、差し入れで行っていますので、1年の季節感がみそ汁の具に現れてきます。6月のじゃがいも、10月のサツマイモ、12月になると大根がと季節を感じられることです。私自身、「食べ物で季節を感じることが楽しい」と子どものころは思ってもいませんでしたが、子どものころの体験が、大人になって自分の食事に現れてきます。
 今は、「毎日おにぎり弁当とみそ汁でいいのでは」という声も聞かれますが、私も毎日味噌汁をつくることができないので、週2回に来年度から増やすことを検討しています。子どもにとっても大人にとっても、うれしいおにぎり弁当です。

第一回 「好き嫌いを気にする人が増えて」

 私は和光学園で幼稚園教師として勤めて34年が経ちます。34年間を通して感じることは、子どもを取り巻く社会状況がここ20年で大きくが変わったことです。
 感覚的ですが、食に関しては、「子どもに好き嫌いある」ことに、とても過敏な母親が増えてきていることです。和光幼稚園は入園して4日目からお弁当が始まります。父母には、「全部食べた満足感を大事にしたいので、少なめでいいですよ。子どもが食べられるものを入れてください。嫌いなものは避けてください。食べやすいようにおにぎりでいいですよ」と言っているのですが、初日から「嫌いなもの」を入れてくる父母がいるようになりました。子どもの好き嫌いを問題にして、何とかに食べさせよと頑張り過ぎる人もいます。そのようなお母さんから聞かれる言葉は、「私がこんなに努力しているのに、どうして食べないの」と、食べない子どもを問題にしてしまいます。
 15,6年前になるでしょうか。入園した3歳児が「ほうれん草」のことを「ギム」とうい子どもがいました。担任はなぜ「ギム」と呼ぶのかわからないので、何気なく父母に聞いてみました。母いわく『「義務だから食べなさい」と言っているので「ギム」と思っているのでしょう』と、担任は唖然としたようです。
 好き嫌いをなぜこんなに問題として見るようになったのでしょうか。食に関していろいろ言われることで「子どもの食事ついて」も無意識のうちに反映しているのではないでしょうか。「中年で太っているのは、自己管理ができていない」と話題になった時や、「一日30品目食べよう」と言われて時もありました。大人(中年以降の)の健康を考えて「バランスよい食事」が騒がれ「血液サラサラ」が話題になったこともあります。最近では「メタボ」が話題になりましたが、このようなことがそのまま、「子どもの食事」にも影響して、「好き嫌いなく食べる子どもに」と考えてしまい、「早くから取り組まないと後になっては取り返しがつかない」とあせってしまうようです。
 5年前、幕内先生の「子どもの食事について」の講演を聞いた時、「子どもは体で食べる。好き嫌いがあって当たり前。脂質、糖質のとり過ぎは体に良くない」と聞いた時、本当にすっきりしました。子どもは大人と違って「子どもとしての特徴」を持っていて、それは決して「その子が変だから、悪いから、我がままだから」ということではないことを学びました。子どもは様々な冒険もしますし、好きなことに夢中にもなり、好きなことを何回もしたがり、時には大人にとってはつきあい難くなることも「子どもの特徴」です。 

「バッカリ食い」
 和光幼稚園では5歳児なると7月に2泊3日の合宿があります。川や山で3日間たっぷりあそびます。多くの子どもは、1日目の夕飯で、おかずよりはまずご飯を食べていきます。食べる子どもは2杯ぐらい食べてから、やっとおかずに気持ちが向きます。幕内先生の「子どもは体で食べる」と聞いた時、私はすぐにこの姿を思い浮かべました。それまで、ご飯だけでなくおかずにも関心が向いてほしいと思い、「ご飯バッカリおかずも食べようと」関心を向けさせる働き掛けをしていましたが、それがいかに子どもの姿にあっていないか反省させられました。それからはご飯を先に食べたい子どもを安心して見ていられるようになりました。
 4年前に幕内先生の話を聞いた父母の子どもたちが1昨年合宿にいきました。この年の子どもたちは本当にご飯をよく食べて、おひつもおかわりして教師もビックリです。合宿は体調を崩す子もなく元気に帰ってきました。
 次回は4年前から始めたおにぎり弁当について書きます。

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